日本語に漢字がなぜ残ったのか?
2021年2月11日(木) 23時39分 カテゴリ: 日本語教育能力検定試験
2020年12月、Facebookのあるコミュニティで、ある方が、次のようなご質問をされました。 皆様 教えていただけないでしょうか。 私は製造業の総務で働いています。同僚のベトナム人の皆さんと週一度社内で日本語学習をしています。先日、こんな質問をされました。「どうして日本語は、ひらがな、カタカナ、アルファベットも使うのに漢字をまだ使っているのですか?」どのように答えたらよいか分からず、私の宿題になりました。助けてください。 いろいろなお話が出たのですが、多くの方は、漢字があることによる利点、漢字が日本語の中で重要な価値を持っているという意見をあげていらっしゃいました。私が書いたのはちょっと視点を変えた歴史のお話しです。日本語史、日本語教育史の知識の一つとして日本語教師を目指す方は知っておいていいことだと思いますのでここに書きとどめます。 終戦直後にアメリカの教育使節団が日本を訪れ、戦後の日本の教育について、これからの日本語は全てローマ字で書くことにし、漢字の学習時間を外国語や数学などの勉強に充てるべきだと提案しました。そして漢字のせいで識字率が低いのだという証拠とするために全国民からランダムに選んだ受験者16,814人を対象に、漢字の読み書き能力の調査を行わせました。ところが、その結果は、西洋の先進国と比べて大変優秀で、日本語をローマ字化しなければならない根拠とはならず、漢字を廃止させるという計画は取りやめになりました。これはエビデンスが漢字教育を守った例と言えるでしょう。 ちなみに漢字が煩雑で不合理、煩わしいものとする日本人の意見は江戸時代からあります。新井白石はイタリア人宣教師シドッチを尋問したときの中でラテン文字に比べて漢字の煩雑さを嘆いていますし、本居宣長、賀茂真淵ら国学者たちは文字数の多さを批判しています。幕末から明治に入ると、さらに近代化という課題が加わって漢字廃止論が持ち上がると考えるといいと思います。日本語史日本語教育史漢字廃止論
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