甲骨文字が見つかったのは?
2021年6月13日(日) 16時07分 カテゴリ: その他
翔泳社『日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド第5版』(いわゆる「赤本」)についてちょっとお話しします。 この本は日本語教育能力検定試験を受験しようと思う皆さんがまず全員持っているだろう書籍です。ただ、やはり、人間がやることですので間違いがあります。私も時々間違いが見つかると翔泳社に連絡しますし、私も気づかないところを別の方が気づいて直してくれていることもよくあります。第4版では国研のコーパス「中納言」を「大納言」と書いていたり、結構びっくりな間違いもあったりしますので、こちらの オンライン上の正誤表を見ておくことをお勧めします。 ところで、私が以前、2回指摘したのですが直っていないところを、お知らせしておきます。 第5版の第1部「確認問題」の第7章文字と表記、日本語史 1 文字と表記(205ページ)の①です。この問題は「3300年ほど前に見つかった、漢字のもとになった文字を何と呼ぶか。」というものです。おそらく多くの方は「甲骨文字」というのが答えだと見抜くと思いますし、正解も「甲骨文字」なのですが、この設問だと、「3300年前に甲骨文字が発見された」という意味に解釈できると思います。つまりこの問題を読む限り、まるで「3300年前の人たちが甲骨文字を発見した」という意味にとれるのではないかと思います。これ自体変な記述ですよね。当時の人が、自分たちが文字として使っているものを「発見した」というのですから。 ただ、私が指摘しておきたいのは、甲骨文字というものが大昔から文字として認識されていたわけではなく、実は「学問の世界で文字として認識されるようになったのは清朝末期の19世紀末(ちょうど日清戦争のころ)になってからだということなのです。石碑や銅鐸などに刻まれた文字の研究は宋の時代からありましたが、甲骨文の研究はむしろ最近のことなのです。 漢字についての雑学の部類ではありますが、頭の隅にでも置いておいていただけたらと思います。 漢字赤本
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